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営業手当って残業代なの?

                   事業主と社会保険労務士との対談です。 
                       {以下、(事)(労)で表します。}



      1 営業手当は所定内賃金か所定外賃金か


   (事)当社では、外回りの多い外勤者(営業職)には営業手当として一律、定額3万円を支給して、
      残業代としての時間外手当は支給していません。実態としては、配達が遅れ残業をすることが
      あります。法的に何か問題はありますか?

   (労)原則的には、残業があれば外勤・内勤を問わず、労働基準法の労働者であれば時間外手当を支
      払う必要があります。 

   (事)会社としては、営業手当のなかに時間外手当を含めているつもりですが、このあたりは曖昧に
      なっているため、外勤者の中には手当の支給に納得していない者もいるかと思います。

   (労)会社が、外勤者に対する時間外手当として営業手当を支払っているのであればこれは「所定外
      賃金」です。しかし、外勤者に交際費や靴、スーツ等の必要経費がかかるからという事で支給
      しているのであれば「所定内賃金」となり、残業があった場合、営業手当も算定基礎賃金(時間
      単価計算)に含め、時間外手当(時間給×割増×残業時間)を支払わなければなりません。

   (事)では、営業手当が「所定内賃金」か「所定外賃金」か、はっきりさせる必要があるのですね。

   (労)このあたりは労使トラブルにつながる微妙な部分です。基本給や手当等の賃金に、予め一定の
      時間外手当を含ませることについては、多くの判例があり、一定の条件のもとで認められてい
      ますので一緒に確認していきましょう。

     2 時間外手当を賃金に含ませるときの条件       


(事)その条件とは?


(労)①賃金に含まれる残業代部分を明確にし、それが何時間分の割増賃金になるのかについて明示
    すること。

   ②実際の残業が、賃金に含まれている部分を超える場合は、その差額を支払うこと。 


   ③就業規則において基本給や手当などに時間外労働の一部が含まれていることを明示すること。

(事)これらの条件をクリアすれば、外勤者に営業手当のみを支給して時間外手当を支給しないとし
   ても違法にならないということですね。


(労)そうです。多くの会社で支給されている営業手当ですが、「所定内賃金」か「所定外賃金」か
    明確に規定していない会社が多いのが現状です。

(事)きっと、なんとなく支給しているという曖昧な状況なのですよね。

(労)その曖昧さから生ずる紛争の最たるものは、労働者が時間外割増賃金の支払を求めてくるとい
   うものです。

(事)規定する場合はそのように記載したらよいですか?

(労)「営業手当の額は、外勤業務・時間外業務の特殊性を考慮して定めるものとして、その額の中
   には月○時間の時間外割増賃金を含むものとする。ただし、実際の時間外労働がその時間を超
   過した場合は、その差額を時間外手当として支払う。」と記載すればよいです。

     3 一律定額支給の問題          


(事)営業手当の一律定額支給というのは問題ありませんか?
 

(労)営業手当に時間外労働手当を含ませる場合には、営業手当の額をいくらに設定するかも重要な
   点です。漠然と一律3万円というのはいかがなものでしょう。

(事)なぜ、問題なのでしょうか?

(労)一般的に時間外労働手当は、基本給とその他手当の合計額により各個人別に算定されるので、
   当然その額はまちまちとなります。外勤者であったとしても基本給などは各個人別であると思
   われます。営業手当が時間外労働手当であるとすれば、その額も一律ではなく、割増賃金の計
   算の基礎になる賃金額により営業手当の額も変わるべきものと考えられます。一律3万円という
   定額支給では、いったい何時間に相当する時間外労働手当なのかも不明確で問題があります。

4 営業手当の設定は定時間式に  


  (事)そう言われればそうですね。では、どのように営業手当を算出すればよいのでしょうか。基本
     給が20万円の外勤者だったとすると営業手当はいくらに設定するのが妥当ですか? 

  (労)労働基準法で認められている残業時間の上限が1年で360時間です。この上限時間をベース
     に考えてみましょう。

 
    1ヶ月の残業の上限時間を360時間÷12ヶ月=「30時間の残業」とみなします。

 
    1ヶ月の所定労働時間は、(1週間40時間限度、1年間は365日÷7日≒52週よりを基に)
     40時間×52週÷12ヶ月で、173時間です。 

      20万円(基本給)÷173時間(所定労働時間)=1,156円と時間単価が算出できます。
     これに時間外割増率を乗じて(1,156円×1.25)1,445円と時間外割増手当がでてきます。
     1ヶ月30時間の残業なので、1,445円×30時間=43,350円となり、営業手当は43,350円
     以上に設定すればよいということになります。


  (事)最初に1ヶ月あたりのみなし残業の時間を決めてから、営業手当を算出するのですね。 

  (労)そうです。定額式でなく定時間式ということになりますね。

  (事)1ヶ月20時間の残業ということで設定した場合、残業が20時間を超えた分はどうなりますか。
 
  (労)超えた分は差額を支給しなければなりません。また、額の見直しも必要となってくるでしょうね。

  (事)残業の少ない月の営業手当と相殺はできないのですか。

  (労)残念ながらできません。賃金の全額支払、毎月支払の原則から認められません。

  (事)そうですか。わかりました。その他に注意することはありますか。

  (労)すでにいる従業員にこの方法を適用させる場合には、不利益変更の問題が生じないように賃金
     を見直す契約などをして個別に同意をとっておくことが必要です。

  (事)問題が起きる前に、まずは就業規則の整備をすることですね。では、早速ですが就業規則など
     の見直しをお願いしたいのですが…。

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