杉浦経営会計事務所 > 相続相談室 > 相続時精算課税制度 > 資産家の相続対策と制度

他の兄弟に贈与申告をチェックされる心配
今改正により、相続税申告にあたり必要なら他の相続人の過去の贈与税申告書の課税価格を税
務署に開示をしてもらえます。他の相続人の過去の贈与の状況を堂々と知ることができます。相
続争いの場合には申告に先立ちこの規定を適用して他の相続人の過去の贈与をチェックするの
が当然になります。
 開示対象は新贈与制度適用者については、その適用開始以降のすべて、それ以外については
相続開始前3年分の贈与についてです。平成15年以降の贈与分からが開示対象になります。
つまり争族が予想されるのならば、自分の贈与を他人から覗かれないようにするためにも使って
はいけない制度です。
新贈与制度を使って遺留分放棄
確実な「争族」対策は「遺言+遺留分放棄」です。これで争いの原因は消えます。
それなりの生前贈与をして遺留分放棄をするには贈与税がネックでしたが新制度では可能になります。
2500万円までの贈与は贈与税なし、超えた部分は税率20%で済みます。
資産家の「争族」対策になるのか
生前に全財産を長男に移してしまえば、争族は起こらないかもしれません。
しかし・・・。
 民法上の相続分は生前贈与分(特別受益)分を考慮します。しかしその相続分を超えて生前贈与を受けていても、差
額を他の相続人に戻す必要はない、という考えがあります。
だから「全財産の贈与を受けてしまえば勝ち」ともいえますが、他説もあり、また実務なら「贈与したというが実質には相続
財産だろう」と遺産確認の訴え等が他の相続人から起こされることは確実でしょう。そして遺留分減殺請求においては、
他相続人に損害を与えることを知って行った贈与財産は取り返されてしまいます。当然に害することが目的でしょうし、
知っているはずでしょうから。
相続税の税務調査でのデメリット
資産家の「相続税」対策に新贈与制度(相続時精算課税制度)はお勧めしません。
子の名義となった預金等が相続税調査で指摘されて、
「名義変更時に親から子が贈与を受けました。贈与税は申告漏れで時効ですが、贈与は事実なので相続財産ではあり
ません」と主張することがあります。
 これでうまくいけば相続税対象から外れます。しかし、新贈与制度適用ならその余地はなくなります。過去の贈与財産
はすべて贈与税の対象ですから。
資産家の相続対策と
       相続税精算課税制度